子供の円形脱毛症はかわいそう!様々な脱毛症例から原因と治療法を考える

薄毛とは髪の毛が抜けたり細くなり、地肌が透けて見えてしまう症状のことです。脱毛症と呼ばれ、薄毛の男性の多くが該当するといわれる男性型脱毛症(通称AGA)や、円形脱毛症など、さまざまな種類が存在します。個人の感覚によるところが多く薄毛の定義は曖昧ですが、毛の密度がおおよそ半分以下になると周囲からも目立つようになると言われています。現在日本の男性の3人に1人がこのAGAを発症していると言われており、薄毛の症状の多くはこのタイプと考えられています。

抜け毛とヘアサイクル

毛髪は一定のサイクルで成長しています。「成長期」(新しい髪が成長する期間)→「退行期」(成長が弱まる期間)→「休止期」(完全に成長が止まり髪が抜けてしまう)というサイクルが、通常2~7年で繰り返されています。
薄毛・抜け毛の多くは、このヘアサイクルが何らかの原因で短縮され、毛髪が完全に成長する前に抜け落ちることでおこります。
成長期の初期の髪は柔らかい軟毛ですが、正常な人の場合、硬く太い毛に育っていきます。しかしヘアサイクルに異常がある場合、この軟毛の段階で抜け落ちてしまうことが多くなります。
その結果、細く産毛のような毛髪ばかりが多くなり、だんだんと毛髪にボリュームがなくなって頭皮が露出してくる…いわゆる「薄毛」になってしまうのです。

“飲む発毛薬”によって薄毛の治療が可能に

薄毛は今まではかつらやシャンプー、育毛剤などでの対策が主流でしたが、2005年に米国で開発されていた「フィナステリド」という”飲む発毛薬”の輸入が認可されました。医師の処方によって服薬できる薄毛の治療薬で、これにより現在では病院で薄毛を治療することが一般的になりつつあります。

また近年では「フィナステリド」だけでなく、投薬治療や塗布薬、メソセラピー(注射)など様々な新しい成分や手法を用いて薄毛治療が行われています。

薄毛にはどんなタイプががあるのか?

薄毛にはいくつかのタイプがあり、各タイプごとに様々な原因が存在しています。

【薄毛のタイプ】

■男性型脱毛症(AGA)

男性型脱毛症(AGA)は、男性ホルモンが特に増加する思春期以降に、頭頂部や生え際などが薄くなり、ゆっくりと進行しくのが特徴です。髪の毛にはヘアサイクルという、生えてから抜けるまでの一連のサイクルが存在しますが、このヘアサイクルが短くなりだんだん髪の毛が細っていくことでAGAを発症します。肉眼では確認しづらいですが、髪の毛が細くなったりボリュームが減って薄毛になった、という場合はAGAの可能性が高いです。

また、症状が出る部位は額の生え際、前頭部、頭頂部の3箇所あり、薄く限局していく症状を文字になぞらえて生え際の進行をM型、頭頂部をO型、前頭部をC型と呼ぶこともあります。各部位の薄毛の進行度や症状の混合によって、AGAは様々なタイプへと派生していきます。

■粃糠(ひこう)性脱毛症

毛穴がフケによって塞がれ炎症が起こり、炎症によって髪の毛が抜けてしまう症状を粃糠(ひこう)性脱毛症と呼びます。

■脂漏性脱毛症

皮脂の分泌異常で頭皮の皮脂が過剰になり、毛穴を塞いで炎症が起こり髪の毛が抜けることを脂漏性脱毛症と呼びます。

■円形脱毛症

円形脱毛症は、頭の一部や複数個所の髪の毛が完全に抜け落ちる脱毛症です。

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■抜毛症

抜毛症は自分で正常な髪の毛を引き抜いてしまう症状で、精神的な要因が関わっています。

■機械性脱毛症

機械性脱毛症は、頭の圧迫や髪の毛を長年引っ張ることで主に生え際などが後退していく脱毛症です。

そのほかにも、加齢、過度のダイエットなどで引き起こされる彌慢(びまん)性脱毛症や、男性は発症しませんが、出産後に一時的に髪の毛が一気に抜け落ちる分娩後脱毛症、そして抗癌剤など薬剤の使用によって髪の毛が抜け落ちる症状などが存在します。

各タイプの薄毛の原因と対策は?

ここでは各薄毛のタイプと治療、対策について記載します。

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■男性型脱毛症(AGA)

AGAにはいくつかの原因があります。

①男性ホルモン

悪性の男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)が増えると、毛の成長が抑止されてヘアサイクルが短くなります。ヘアサイクルが短くなると、だんだん髪の毛が細っていきやがて薄毛になります。

②遺伝

DHTという悪性の男性ホルモンが毛根に集まった際に、その影響を受けやすいか受けにくいかは遺伝によって違っているといわれてます。そのため、遺伝的に影響を受けやすい場合は、薄毛になりやすい体質と言えます。また、薄毛と遺伝については分かっていないことも多く、引き続き研究が進められています。

③生活習慣

偏った食事や喫煙、睡眠不足などは頭皮の状態に悪影響を及ぼし、薄毛を引き起こすと言われています。また、ストレスなども頭皮の血行を悪くし、髪の毛の成長を阻害する要因と一つです。

AGAの場合は普段の生活習慣での対策のほか、治療によって治すことも可能です。下記の6つについては厚生労働省に認可されているものになります。

・プロペシア

フィナステリドと呼ばれる成分が日本でのAGA治療の薬として認可されており、病院にいくことで処方してもらえます。

・リアップ

フィナステリドと同じく、日本で薄毛対策として外用を認可されているミノキシジルが入った育毛剤です。リアップx5など有効成分がより多く入っているものもあります。その他にも、専門外来などでは下記の治療法を行っているところもあります。

・ミノキシジルタブレット

リアップに含まれているミノキシジルを服用する方法です。日本では塗布以外は認可はされていませんが、一部の病院では治療法として取り入れており、内服の方が作用が強い分、効果・副作用ともに大きいと考えられます。元々ミノキシジルは高血圧のための内服薬として米国で販売されており、内服自体は問題はありませんが既往歴や服用量、経過観察など、専門医のもとでしっかりと検査、指導を受け服薬する必要があります。

・メソセラピー

皮膚の下部にある真皮へ直接薬剤を注入する手法です。脂肪溶解注射も同じ原理であり、転じてこのダイエット治療法は一時期メソセラピーと呼ばれていました。現在では育毛でもこの治療法が実施されており、成長因子や有効成分などを配合し直接頭皮に打ち込みます。また、HARG療法と呼ばれる独自の手法を確立し、治療法として行っているクリニックもあります。

・プラセンタ

女性の美容施術などでよく使われるプラセンタ(胎盤エキス)ですが、一部ではAGA治療として利用されています。内分泌を調整する作用や、成長因子としての働き、頭皮の血行不良の改善など、いくつかの作用が期待されており、実際に治療としても行われているようです。

・植毛

他の治療法の多くは、薬の作用や身体の機能の増長などで髪の毛を元に戻すようなアプローチですが、その他にも植毛のように手術で解決する方法もあります。植毛は重度の薄毛や外傷による薄毛、原因が分からない薄毛など幅広く対応できます。自毛を使う場合と人工毛を使う2種類あり、自毛の方が安全でメンテナンス費用もかかりにくいと言われています。費用はグラフト(株分け、1本毛のものから3本まとまった毛などいくつか種類があります)あたりの価格で計算されます。

対策としては、食事を和食中心のものにし脂ものを控えたり、睡眠をしっかりとる、喫煙をやめるなど、生活習慣の改善が挙げられます。様々な要因が関わっているため食べ物を変えることで髪の毛が生える、といったことはなかなかありませんが、良質なたんぱく質とビタミン、ミネラルなど不足しがちな成分をしっかりと取るようにしましょう。

また、シャンプーなどのヘアケアも関わってきます。シャンプーの成分よりも洗い方やすすぎをしっかり、しすすぎ残しを防ぐなどといった洗い方が重要です。


■粃糠(ひこう)性脱毛症・脂漏性脱毛症

頭皮環境や髪への負担など、ヘアケアが原因で引き起こされる薄毛です。粃糠(ひこう)性脱毛症の場合は、フケが大量発生して毛穴を塞ぎ、毛穴で菌が繁殖したり炎症を起こすことで薄毛になります。脂漏性脱毛症の場合は、過剰な皮脂の分泌によって同じく毛穴が塞がれ菌の繁殖などが起こり薄毛になります。どちらもシャンプーの方法や、ヘアケア品を変えることで効果がみられることもあります。髪への負担を減らすため、シャンプーは合成界面活性剤を含まない無添加のものを使用し、よく洗い流すこと、また過剰に洗いすぎないことを心がける必要があります。

■円形脱毛症・抜毛症

円形脱毛症、抜毛症はどちらも精神的な要因が関わっているといわれています。円形脱毛症は本来身体を守るはずのリンパ球が何らかの要因で毛根部分を攻撃することで、一時的に髪の毛が抜け落ちてしまうと考えられています。抜毛症については、ストレスや不安が原因と考えられているものの、現在ではわかっていないことが多いです。

円形脱毛症は治療が確立されていませんが、病院でも対応してくれるところはありステロイドや外用薬などを処方されるのが一般的です。

最近では子供の円形脱毛症も増えており、その治療方法についても研究されています。

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■機械性脱毛症

女性であれば髪の毛を結んだり、男性であれば帽子やヘルメットなどを長期間被っていることが原因と言われています。ともに髪の毛をほどいたり帽子を脱ぐなど、なるべく外的な圧力がかからないように工夫する必要があります。

基本的にはAGAによる薄毛が多いため、薄毛の場合は生活習慣の改善やAGA治療が推奨されます。しかし、重症化したり薬剤などの影響で完全に髪の毛が抜け落ちる場合などは、かつらや植毛を利用される方が多いようです。その他にも、医学的に髪の毛が生えると証明はされていませんが、頭皮環境を良くするためのヘッドスパやサプリなども一つの対策法として考えられます。

薄毛は研究などが進み今では治療などで、少しづつ解決できる方向へと進んでいます。様々な治療法も開発されており、気になる方は積極的に情報を発信しているクリニックやサイトなどを参考にしながら対策方法を検討すると良いでしょう。

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低インフレ後の「資産バブル」再来リスク

非伝統的金融政策(量的緩和)からの出口に差しかかっている米国で、失業率や新規雇用者数で見る雇用情勢は着実に改善しているにもかかわらず、インフレ率が目標の2%未満の状態が続いている。

このことに米連邦準備理事会(FRB)が頭を悩ましている。これは日本にも共通する問題だ。米国で低インフレが続く原因とそのリスクを考えてみよう。

FRBが使命とする政策目標はインフレ率の安定と雇用の最大化だ。この2つの目標に対して政策手段は金融政策の1つ だけである。独立した1つの政策目標を達成するためには、独立した1つの政策手段が原理的に必要とされる。にもかかわらず、一般にFRBの使命が矛盾しな いのは、インフレ率と雇用の変化に安定した関係がある場合だ。

例えば「フィリップス曲線」の名で知られているようにインフレ率と失業率の間にはトレードオフの(負の相関)関係が ある。FRBが短期・中期的なショックに対応しながら金融政策のかじ取りを行い、インフレ率を一定の水準で安定化させれば、長期的には需給ギャップはゼロ となり、長期的な均衡状態における自然失業率を達成できると考えられている。

しかし、インフレ率と失業の関係性が壊れてしまう時もある。その代表例が1970年代のスタグフレーションの時代で、インフレの高進と失業率の上昇が同時進行した。こうなると金融政策として双方の同時追求ができない。

結局、この時は1979年に就任したポール・ボルカーFRB議長の「新金融調節方式」の下で厳しい金融引き締めが実 施され、根強いインフレ期待を抑え込むことを優先した。ただし、その代償として1980年代前半は2度のリセッションに見舞われ、失業率はピーク時に 10%台まで上昇した。

<低インフレの何が問題か>

今、FRBが直面している問題は、1970年代とは反対の「低インフレ持続」リスクだ。この問題はローレンス・サ マーズ元米財務長官が指摘してきた「長期停滞(secular stagnation)仮説」、つまり自然利子率がマイナスに落ち込んでしまうリスクとも関連して議論されている。

もしデフレと紙一重のような低インフレが慢性化すれば、FRBはこれまでの量的緩和で膨張したバランスシートの正常 化(縮小)もできず、目立った金利の引き上げもできないことになる。そうした状態のままだと、将来再び経済に何かのショックが発生して景気が後退した場合 に、金利の引き下げ余地は極めて小さくなる。つまり、FRBが金融政策として取れる手段は極めて限られるという厄介な事態となるわけだ。そういう意味で低 インフレは低金利と表裏の関係にある。

足元の個人消費支出(PCE)価格指数の変化は、全品目ベースで0.3%(今年2月の対前年同月比)であり、FRBが重視している「食料とエネルギーを除くベース」で同1.4%と目標の2.0%に届いていない。

もちろん、全品目ベースで0.3%まで低下したのは、昨年第4四半期から顕著になった原油を中心とする資源価格の下 落の影響だ。それは資源価格の調整・下落が止まれば終わるので一過性のものであり、問題はない。むしろ米国のマクロの交易条件が改善するので実質所得が増 加する。ところが「食料とエネルギーを除くベース」でも目標の2%に届かない状態が2012年5月以降続いている。これが懸念されているわけだ。

<現下の日本経済にも類似した特徴>

それでは何が低インフレ・低金利の原因となっているのだろうか。原因候補の第1は設備投資需要の低迷である。設備投 資の減少は長期的には供給面の制約をもたらすが、短期では資金需要と投資需要の減少として低金利、低成長、低インフレの要因となる。サマーズ氏はこうした 見方に立っているようであり、「インフラ整備(公的資本形成)などのために財政支出を拡大する」ことを提唱している。

しかし、民間設備投資が名目国内総生産(GDP) に占める比率は、2009―2014年の平均が11.9%、1950―2008年の平均値は12.0%であり、安定している。GDP成長率と民間設備投資 伸び率の間には高い正の相関関係があるが、その関係性が2009年以降に変化しているようにも見えない。つまり、設備投資が細っている兆候は見られない。

第2の原因候補として貯蓄率の上昇(消費性向の低下)はどうだろうか。家計の貯蓄率(対可処分所得)は、リーマン ショック後の不況下で家計のバランスシート調整が起こった局面では上昇したが、2013年4.9%、2014年4.8%と落ち着いている。これは 1990―2008年までの平均5.5%より低い。つまり、家計部門で貯蓄増加(消費減少)が生じているわけでもない。

民間企業部門ではどうだろうか。民間事業部門の「未分配企業利益(undistributed corporate profit)」の国民総所得(GDI)に対する比率を見ると、1990―2008年までの平均値が2.3%であるのに対し、2009―2014年の平均 は5.0%と上がっている。つまり、2009年以降、企業利益が回復する一方、内部に留保される利益の比率が高まっている。また、GDIに占める労働分配 率は、1980―2008年の期間は平均56%を中心に安定的に上下動をしていたが、2009―2014年の平均値は53%と下方シフトの傾向が見られ る。

以上で何が起こっているか察しがつく。つまり、リーマンショック以降、企業収益は順調に回復し、企業は手元流動性を積み上げ、雇用も回復しているにもかかわらず、それが賃金上昇にあまりつながっていないのだ。興味深いことに、これは現下の日本経済でも類似した特徴だ。

<失業率と名目賃金伸び率の関係に異変>

そこで掲載図をご覧いただきたい。横軸は失業率、縦軸は名目賃金指数の変化(前年同月比)だ。いわゆるフィリップス 曲線である。同曲線を論文で最初に提示したウィリアム・フィリップスは失業率と名目賃金の変化として描いた。その後ポール・サミュエルソンが失業率とイン フレ率の関係性として定式化してから、それが一般的になったが、ここでは名目賃金指数の変化として示した。

失業率と名目賃金の変化の関係性を示す近似線の傾きが、2009年までとそれ以降で変わっているのがわかるだろう。 つまり、2010年以降、景気の回復で失業率が低下しても名目賃金がそれ以前ほど伸びていないのだ。インフレ率と名目賃金の変化にも正の相関関係がある。 したがって「賃金伸び率の低下が低インフレ率を招く」という構図に経済がはまっていると筆者は考えている。

では、失業率で見た雇用の回復にもかかわらず、なぜ賃金伸び率は低いままなのだろうか。「完全失業率=失業者数 /(就業者数+求職活動をしている失業者)」で算出される。戦後最大の景気後退を経て米国の労働力の供給には失業率が示す以上のスラック(余裕)が生じて いる可能性がある。実際、米国の労働参加率は過去数年で3%ポイントも低下しており、これはベビーブーマー世代の引退という人口動態要因を勘案しても大き な低下だ。相当数の「求職あきらめ組」を含んでいると考えられている。

そうした「求職あきらめ組」も景気の回復に伴ってじわじわと求職活動に復帰している。その結果、右上がりの労働供給 曲線(縦軸に賃金、横軸に労働供給・需要量)の左部分がフラットに近い状態になっていると考えると説明がつく。この状態では景気の回復で労働需要曲線が右 にシフトしても、労働供給曲線がフラットに近いので名目賃金はなかなか上がらない。

今後、景気の回復、雇用需要の増加が続けば、近い将来に労働需要曲線はさらに右にシフトして労働供給曲線の右肩上が りの部分と交差するようになるだろう。つまり、賃金が上がり始めるということだ。イエレンFRB議長の直近3月27日の講演(Normalizing Monetary Policy:Prospects and Perspectives)を読む限り、これはFRBの基本認識(メインシナリオ)でもある。筆者も大方はそのシナリオで正しいのだと思う。

ただし、名目賃金の伸び率と失業率の関係は既述の通り決して安定的ではなく、様々な要因で変化する。技術革新の進展 で、製造業でもサービス業でも、定型的な労働を中心に機械による代替がますます進んでいる。現下のドル高も輸入物価の低下を通じて、海外と国内の労働者と の賃金面での競合を強めている。こうしたことも賃金伸び率の低下要因になっている可能性がある。

<将来のリスクはインフレより資産バブルか>

それでも上記のメインシナリオに基づいてFRBは低インフレ見通しが変わるまで、金利の引き上げには慎重で、緩和的 な金融政策を継続するだろう。この点において前掲講演でのイエレン議長の説明は実に微妙で、インフレ率が目標水準に達するまで金利の引き上げや金融政策の 正常化を待つことは適切ではなく、目標水準の達成が予見できるようになったらアクションを取るのだと説明をしている。

そして注目すべきは、「長過ぎる期間、金利を低過ぎる水準に維持すれば、投資家による不適切なリスクテイクを助長しかねず、金融市場の安定性を損なう可能性がある」と述べている。つまり、資産バブルのリスクに言及しているのだ。

イエレン議長はそれ以上踏み込んでいないが、この点は今日の金融政策をめぐる厄介な問題に絡んでいる。というのは、インフレ率の安定と雇用の最大化を実現する金利水準と、資産バブルを抑制・回避するのに適正な金利水準が一致する保証はないということだ。

むしろ「雇用・インフレに望ましい金利水準が資産バブル抑制・回避に望ましい金利水準より低くなる」という乖(かい)離が生じる可能性が高い。これこそ過去四半世紀の様々な資産バブルの教訓ではないだろうか。

さらに言えば、米国の景気循環自体が、総需要と総供給のバランスを軸にした実体経済の循環的な変動(business cycle)から、信用の膨張と収縮を伴う資産価格の変動(credit cycle, market cycle)に性質を変えている可能性がある。

ドル高を伴った低インフレが長引く結果、金利の引き上げが延び延びになり、信用の膨張が再び株式か不動産などの資産価格のバブル的高騰を招く危険が、まだ将来のことではあるが、じわりと高まっていると思う。

振り返ると、ITバブル崩壊による景気後退後、当時のグリーンスパンFRB議長は、2003年に景気後退が終わって いるにもかかわらず、インフレ率がじりじりと下がり、日本のようなデフレに陥るリスクを真剣に懸念した。結局当時はデフレにはならず景気回復が持続し、 2004年6月から金利引き上げに転じたのだが、そのテンポは非常に慎重なものだった。FRBは公式には認めていないが、デフレに陥るかもしれないという 2003年の恐怖経験が、住宅高騰下での金融引き締めをスローなものにした可能性があると筆者は思っている。

代々FRBはグリーンスパン議長もバーナンキ議長も、「バブルは破裂してからでないとバブルとは判断できない」とい う立場であり、資産価格の高騰もそれが実体経済の景気の過熱、インフレ率の過度な上昇として顕現化する場合にのみ金融引き締めで対応すべきであるという方 針を取ってきた。

そうした方針の背後には、雇用・インフレに望ましい金利水準と資産バブル抑制・回避に望ましい金利水準のかい離を想 定すると、「1つの金融政策で複数の異なる政策目標を追求する」という政策論の原理的な矛盾を認めることになるので、それを回避したい意識があるのだろ う。しかし、資産バブルは必ず金融緩和下の信用膨張をベースに起こる。そのリスクを過小評価するコストはあまりに大きかったことが2000年代のバブル崩 壊と金融危機の教訓だ。

筆者は米国経済については長期的に強気の見方をしているが、それはリスクの不在を意味しない。イエレン議長がこの厄介な問題にどう対処するか、それが問われる局面が数年以内に到来する気がしてならない。